オスカー受賞作品が、歴史を追うごとにハズレが多くなってきているのは周知の事実だ(独断と偏見です、本当は)。
制作会社、配給会社の巨額の宣伝活動があったりして、あまりアテにならない。...実際にアタリが少ないのかもしれないけど。
しつこいようだけど『恋落ち』&グイでなくて『エリザペス』&ケイト・ブランシェットだっただろう、あの年...本当にしつこいようだけど。
まあそういうことでアカデミー賞受賞作品は期待しない主義だが、絶対的に信用しているのは『外国語映画賞』である。これをとった作品は今までハズレがなかった。佳作揃いなので、ちょっといい映画が観たいと思えばこれを観ればいい。本題。
受賞作の『善き人のためのソナタ』である。
DDR、シュタージ...という言葉を聞くと、『プラハの春』『ベルリンの秋』あたりを読んだことがあれば、よどんだ空、閉ざされたコンクリート造りの冷たい部屋、寒々しい窓の外...とにかくそんな暗い風景が浮かんでくるのではないだろうか?
誰もが疑心暗鬼になり、発言の自由が奪われていた時代。お互いに監視しあい、目をつけられれば自宅に盗聴器がしかけられ、尾行される。また、何かで監禁、尋問された場合、他の誰かを密告すれば自由が得られた。
さて、この作品のテーマは二つあると私は思う。
一つは勿論、社会主義下での粛清である。旧東ドイツで、プライベートというものがなかったこと、そして愛する者にまでも自らの保身の為に裏切られたこと。そんな暗くて冷たい時代を忠実に再現している。
もう一つは、性善説とでも言うのだろうか?ある種の人々は自らの利権の為に、悪人になることが不可能であること。
この2点が静かに語られる。
優秀な尋問指導官であったシュタージのヴィースラー大尉。彼はその真面目な性格故に国家を信じ、プラクティカルに任務を果たしていた。しかし、盗聴中に自由な発想や愛らしくも汚い人間の側面を目の当たりにし、当初は怒りに震えながらも、少しずつ変わっていく。社会主義下で失ってしまっていた人間らしさをゆっくりと取り戻していく。
そしてある時、「この曲を聴いたものは絶対に悪人になることはできない」という『善き人のためのソナタ』を盗聴器越しに聴くのだった。
個人的にこの映画の何が一番気に入ったかというと、『善き人のためのソナタ』というタイトルそのものである。ポスターやチラシを見ただけでは、彼がヘッドフォンで何を聴いているのか分からない。タイトルにソナタとあるのだから音楽なのか?と思うところだが、実際はシュタージの盗聴である。他人のプライベートを事細かくチェックしている姿なのだ。
米、英では
The Lives of Othersというタイトルになっているし、ドイツ語の原題もそのようで、盗聴・監視そのものズバリなんだけど、それではこの映画が持つ、微かな温もりが伝わらないのではないだろうか。
この邦題、ただ作品中に出てくる曲のタイトルを持ってきたに過ぎないのですが、何だか好きです。
- 2008/02/04(月) 09:36:26|
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